夫のパソコンの中あった「Family」というフォルダ。でも、そこに私の写真は一枚もなかった。

鳴り響いたスマートフォン

焦って立ち上がるダニエル

ダニエルのスマートフォンが鳴った瞬間、彼の表情が音もなく変わりました。画面をちらりと確認し、すぐに伏せて立ち上がりました。「会社のサーバーがダウンした、すぐ行かないといけない」。上着を掴んで玄関へ向かう背中に、サラは「夕食は?」と声をかけました。返事はありませんでした。ドアが閉まった後、サラはテーブルの上の2人分の皿を見つめました。ダニエルが食事を残して飛び出したのは、12年の結婚生活で初めてのことでした。

繋がらない電話

心配で電話をかけるサラ

1時間が経っても、連絡はありませんでした。サラはスマートフォンを手に取り、ダニエルに電話をかけました。6回の呼び出し音の後、留守番電話に繋がりました。30分後にもう一度かけると、今度は電源ごと切れていました。サーバーダウンの対応中に電話の電源を切る必要が、一体どこにあるのでしょうか。サラの中で、小さくて鋭い疑問が、じわじわと広がり始めていました。

眠れない夜

ソファーで目を閉じるサラ

深夜0時を過ぎても、2時を過ぎても、ダニエルからの連絡はありませんでした。サラはソファで目を閉じましたが、眠れませんでした。12年間、こんなに長い「サーバーダウン」は一度もなかったはずです。そして夜明けの光がカーテンの隙間から差し込んできた瞬間、玄関のドアが静かに開く音がしました。サラは息を飲みました。ダニエルの顔を見れば、何かがわかる気がしました。

帰ってきた夫

ダニエルは深く疲れた顔をしていました。しかしサラを見た瞬間、いつもの柔らかい笑顔を作りました。「大変だったね」とサラは声を絞り出しました。ダニエルは「うん、ひどかった」とだけ言い、シャワーを浴びてそのままベッドへ倒れ込みました。規則正しい寝息が聞こえてきた時、サラの中で何かが決まりました。今がその時だと、全身が告げていました。

カーナビの履歴

サラはそっとガレージへ向かい、ダニエルの車の助手席に滑り込みました。カーナビの履歴画面を開いた瞬間、表示された目的地を見て息が止まりました。「サーバーダウン」の対応に向かうには、絶対にあり得ない場所でした。サラは震える手でその施設の名前を検索しました。画面に表示された説明を読んだ瞬間、サラの頭の中で、12年間のすべてのピースが一気に繋がり始めたのです。

ノートパソコンの中身

ガレージから戻ったサラは、リビングのテーブルの前に立ち止まりました。カーナビで見たあの場所と、パソコンの中に何かが繋がっている気がしました。「Family」フォルダの中に広がっていた、あの見知らぬ家族の写真。そしてカーナビに残された、仕事とは無関係の場所への記録。2つのピースが、サラの頭の中でゆっくりと重なり始めました。まだ見ていないものが、パソコンの中にあるとサラは確信しました。

エマ・リチャードソン

サラはメールアプリを開きました。エマ・リチャードソンという名前のスレッドが、受信箱の一番上にありました。最新のメールの件名を見た瞬間、サラの手が止まりました。件名にはたった一言、「ルークの手術、無事に終わったよ」と書かれていました。ルーク。あの写真のファイル名にあった名前でした。サラは震える指で、そのメールをクリックしました。

最初のメールの日付

サラは一番古いメールを探し、日付を確認しました。その瞬間、声を失いました。それはダニエルとサラが出会った年より、さらに1年前のことでした。つまりダニエルはサラと出会う前からエマと関係を持ち、サラと付き合いながらエマとの関係を続け、サラと結婚した後もエマのもとへ通い続けていたのです。「一生、君だけを守る」というプロポーズの言葉が、サラの耳の中で歪んで響きました。

二つの家庭

メールを読み進めるうちに、全体像が浮かび上がってきました。ダニエルはヒューストンにエマと子供たちのためのアパートを借り、毎月の生活費を送金していました。サラとの共同口座から毎月消えていた数百ドルが、その送金に充てられていたのです。サラが節約のために我慢していた旅行、先送りにしていたリフォーム、そのすべてが別の家族のために使われていました。しかしさらに驚くべき事実が、次のメールに隠されていました。

エマも知らなかった

エマからダニエルへのメールを読み進めたサラは、あることに気づきました。「今週末も来られないの?」「また仕事?」という言葉が、何度も繰り返されていたのです。つまりエマもまた、ダニエルがオースティンでサラと暮らしていることを知らなかったのです。エマはダニエルを「多忙なIT専門家」だと信じ、子供たちと待ち続けていました。サラはゆっくりと立ち上がり、スマートフォンを手に取りました。電話をかける相手は、もう決まっていました。

1 2 3

コメントを残す