1. 吠え声が導く方角

モンタナ州ビッタールート山脈の麓、真冬の午前2時、ジェイク・モリソン(38歳)は急な物音で目が覚めました。施設の外から、長くて鋭い遠吠えが聞こえていたのです。それはタイタンの声でした。タイタンが遠吠えするのは珍しいことでした。ジェイクは懐中電灯を持って外に出ると、柵の一部が破られていました。タイタンはいなくなっていました。足跡が雪の斜面を山の奥へと向かっていました。ジェイクはその後を追いながら、背すじが冷たくなるのを感じました。
2. 雪の中の足跡

懐中電灯で雪面を照らすと、タイタンの足跡がはっきりと残っていました。直径20センチを超える足跡でした。普通のハイイロオオカミの足跡の約2倍の大きさです。ジェイクは急斜面を登り続けました。足跡は山の奥へ奥へと向かっていました。タイタンはいつも夜間に何かを感じ取るような素振りをしていました。なぜこの夜、この方角を迷いなく進んでいったのでしょうか?
3. 雪崩の跡

30分歩いたとき、遠くから別の音が聞こえました。人間の叫び声でした。ジェイクは立ち止まりました。声の方向はタイタンの足跡と同じでした。無線機で緊急救助センターに連絡しながら走りました。そして斜面の先に見えてきたのは、大規模な雪崩の跡でした。雪の山の脇に、巨大な灰色の影がしゃがみ込んでいました。タイタンは、助けを必要とする人間がいることをどうやって知ったのでしょうか?
4. 子オオカミとの出会い

ジェイクがタイタンと出会ったのは4年前の初冬のことでした。ビッタールート山脈の巡回中、雪の溝に落ちて動けなくなっていた子オオカミを発見したのです。体は冷え切り、右前足を負傷していました。周囲に親の気配はありませんでした。規定では野生動物を個人で保護することは禁じられています。しかしこのまま放置すれば子オオカミは死にます。ジェイクは迷わず子オオカミを抱き上げました。
5. 規則破りの決断

ジェイクはレンジャーステーションに戻り、子オオカミを毛布でくるんで体を温めました。地元の獣医に連絡すると「骨折はない、栄養補給と保温で回復するかもしれない」と言われました。野生動物管理局には報告しませんでした。規則に反することはわかっていました。しかしあの目を見た瞬間、見捨てることはできなかったのです。ジェイクは毎日エサを与え、足の回復を見守り続けました。
6. タイタンという名前

子オオカミが2週間で立ち上がれるようになったとき、ジェイクは名前をつけました。「タイタン」。すでにその体格が同年齢のオオカミより一回り大きかったからです。タイタンはジェイクの声に反応し、すぐに名前を覚えました。そして不思議なことに、施設の外に出しても、ジェイクのそばを離れようとしませんでした。この野生の動物はジェイクのことを「自分の群れ」と認識していたのでしょうか?
7. 驚異的な成長

1年が経つと、タイタンの大きさは明らかに異常でした。ハイイロオオカミの平均体重は40〜50キログラムですが、タイタンはすでに55キログラムを超えていました。体高は地面から90センチ。山をパトロール中にタイタンを連れて歩くと、道行く人が立ち止まりました。「あれは本当にオオカミですか」と聞かれることが何度もありました。ジェイクはいつも「普通のハイイロオオカミです」と答えましたが、自分でも何かが違うと感じ始めていました。
8. 120ポンドの謎

2年目の春、タイタンは体重54キログラム(約120ポンド)に達しました。記録されているハイイロオオカミの最大体重を超えていました。血液検査の結果、タイタンの遺伝子には北部のオオカミ種との混血を示す配列が含まれていることが判明しました。しかしそれだけでこの体格を説明するには不十分でした。ミズーラ大学のリード博士がデータを見て言いました。「化石記録にしか存在しないとされた体格だ」と。タイタンの巨体の秘密は、いったいどこにあるのでしょうか?
9. リード博士の訪問

ミズーラ大学の野生動物生物学者パトリシア・リード博士(45歳)は、タイタンの写真を見てすぐにモンタナに飛んできました。タイタンと対面した博士は息を呑みました。「これほど大きなハイイロオオカミは見たことがない」と言いました。博士は2日間かけてタイタンを詳しく調べました。「隔離された山岳地帯で独自に進化した小集団の末裔である可能性が高い」という調査報告書が後に作成されました。ジェイクにとっては、誇らしいはずの言葉でしたが、、
10. 希少種の可能性

リード博士の報告が野生動物管理局に届いた翌日、ジェイクの携帯に見知らぬ番号から電話が来ました。「タイタンの件で話がある」。それだけでした。声は低く事務的で、ジェイクはなんとなく嫌な予感を感じ、冷や汗をかきました。電話を切り、ジェイクはあることに気づきました。タイタンの希少な価値を証明したことが起こしうるとある可能性を、自分はまったく考えていなかったのです。ジェイクはタイタンを見つめました。一体、このジェイクに何が起こってしまうのでしょうか。