リード博士を呼ぶ
レイチェルはフロリダ大学の動物行動学者、ジェームズ・リード博士に連絡しました。リード博士はアフリカゾウの哀悼行動を専門に研究している研究者でした。「象の異常行動は必ず何かを伝えています。映像を送ってください」と博士は言いました。映像を受け取ったリード博士は返信してきました。「これは単純な哀悼行動ではない可能性がある。なぜこの特定の場所なのか、そこに鍵があるのでしょうか?」
研究者の見解
1週間後、リード博士がサンクチュアリを訪れました。ナラを2日間観察し、行動パターンを記録しました。「掘る行動自体は哀悼行動の一種として記録例があります。しかしここまで一点に集中して繰り返す場合、その場所に何らかの特別な意味があることが多い」とリード博士は言いました。「なぜナラはこの場所だけを選び続けるのでしょうか?この地点に、何かがあるのでしょうか?」
特定の場所への執着
リード博士はナラが掘っている場所の正確な座標を記録し、サンクチュアリ全体の地図に落とし込みました。北東の隅の、木が少ない開けた場所でした。「この場所を選ぶ理由が何かあるはずだ」と博士は言いました。レイチェルは2年前のマヤの行動記録を持ってきました。マヤが生きていたころの観察日誌を開きながら、該当エリアの記録を探し始めました。
マヤの記録を調べる
観察日誌を遡ると、マヤが生きていた時期の記録に興味深い記述がありました。「マヤは毎日午後2〜4時ごろ、北東エリアの特定の場所で長時間過ごすことが多い」というメモが繰り返し出てきたのです。スタッフは当時「日当たりが好きなのだろう」と解釈していました。しかし、ナラが今掘っている場所は、マヤが毎日過ごしていた場所と同じではないのでしょうか?
カメラ映像の分析
リード博士はサンクチュアリに設置された過去のカメラ映像を確認しました。3年前の映像に遡ると、マヤが午後になると必ず北東の隅の同じ場所で立ち止まり、長い時間過ごしているのが確認できました。他の象はその場所に近づかないことが多く、まるでその場所がマヤのためにあるかのようでした。「マヤはこの場所に引き寄せられていた。なぜなのか」とリード博士は言いました。
マヤが好んだ場所
「ゾウは足の裏の感覚が非常に鋭く、地面を通して低周波振動や温度変化を感知できます」とリード博士は説明しました。「マヤが毎日この場所に来ていたのは、地面から何かを感じ取っていたのかもしれない」と言いました。レイチェルは首を傾けました。フロリダには温泉地帯があることは知っていましたが、このサンクチュアリの敷地内に何かあるのでしょうか?
地下調査の依頼
レイチェルはフロリダ大学の地質学チームに連絡し、北東エリアの地下調査を依頼しました。翌週、地質学者のドクター・マイケル・スタークとそのチームがやってきました。地熱センサーと音波探査装置を使い、地下構造を調べ始めました。1日かけた調査の後、スタークが地図を広げながら言いました。「結果が出ました。少し面白いものが見えます」と。
地熱調査の発見
スタークが示したデータには、地下6〜8メートルの位置に異常な熱源があることが示されていました。「小規模な温泉帯です。フロリダ半島は地下に石灰岩層が広がっており、その隙間を温水が流れることがある。この地点は地表に近い位置に温水の流れがある」という説明でした。つまりナラが掘っている場所の真下に、温泉があるということなのでしょうか?
温泉の存在
リード博士は興奮を隠せませんでした。「これだ。マヤは足の裏でこの温水の熱を感知していた。毎日この場所に来ていたのは、地面からの温かさを感じるためだったのかもしれない。特に秋から冬にかけて気温が下がる時期に、象は暖かい場所を好む」と言いました。レイチェルは長い間その場所を見つめていました。マヤが2年前に毎日この場所で過ごしていた理由が、ようやく解けていきました。
マヤが感じていたもの
「ナラも同じ感覚を持っている可能性がある。マヤが毎日いたこの場所が、ナラにとってもマヤの『いる場所』として記憶されている。そしてナラ自身もその温かさを足の裏で感じながら、マヤを求めてここを掘り続けているのかもしれない」とリード博士は言いました。哀悼と本能が同時に表れている行動。ナラはマヤのことを思いながら、マヤが感じていたものを今も探しているのでしょうか?