嵐の翌朝、廃屋の床下で見つかった30通の封筒——76歳の女性が50年間、封を切れなかった理由

11. 幼なじみの恋

バス停で手を握り合う若いカップルの後ろ姿(回想)
バス停で手を握り合う若いカップルの後ろ姿(回想)

アンが語り始めました。彼女とリチャードは同じ通りで育ち、高校の頃から付き合っていたといいます。1968年の春、リチャードは徴兵が決まりました。出発の朝、ガレージの前でリチャードはアンの手をずっと握り続けていたと彼女は言いました。「バスが来るまで、一言も話さなかった。でも彼の手のぬくもりは、今でもはっきり覚えています」。

12. 開けられなかった理由

届いた封筒を開けられず棚に積み重ねる若い女性(回想)
届いた封筒を開けられず棚に積み重ねる若い女性(回想)

手紙が届き始めても、アンは一通も開けませんでした。「開けてしまったら、彼がベトナムにいるという現実を直視しなければならない。封をしたまま棚に置いておけば、まだここにいるような気がした」とアンは言いました。「でも本当は、開けるのが怖かった。もし手紙の中で別れを告げていたら、と思うと、指が動かなかったのよ」。30通の手紙が封じられたまま、アンの心に何が積み重なっていったのでしょうか。

13. 帰還した男

帰還後に窓の外を無言で見つめる若い男性(回想)
帰還後に窓の外を無言で見つめる若い男性(回想)

1971年の秋、玄関のドアをノックする音がしました。開けると、リチャードが立っていました。しかし彼は別人のようでした。目の焦点が合わず、ほとんど笑わず、夜中に叫び声を上げて目を覚ます日が続きました。アンが触れようとすると、体をこわばらせて後ずさりしました。食事中も何時間も無言で庭を見つめ、アンが何を話しかけても、ほとんど返事をしませんでした。

14. 残されたメモ

テーブルに残された手書きのメモを見つめる若い女性(回想)
テーブルに残された手書きのメモを見つめる若い女性(回想)

それでもアンはリチャードのそばにいました。帰還から一年が過ぎ、少しずつ会話ができるようになってきた1972年の秋のある朝、目を覚ますとリチャードの姿がありませんでした。テーブルの上に一枚のメモが残されていました。「きみにはもっとふさわしい人間がいる。俺を待たないでくれ。ごめん——リチャード」。このメモを残して、彼はどこへ消えてしまったのでしょうか。

15. それでも届き続けた手紙

届いた手紙を開けず次々と箱に入れる女性(回想)
届いた手紙を開けず次々と箱に入れる女性(回想)

リチャードが去った後も、手紙は届き続けました。ベトナムの消印だけでなく、アメリカ国内の都市名が書かれた封筒も混ざるようになりました。アンはそれらもすべて、封を切らずに箱へ入れました。「開ければ彼のことを考えてしまう。でも開けなければ、まだ終わっていないと思えた」と彼女は言いました。「あの頃の私にできたのは、ただ箱を閉じることだけでした」。

16. 1978年の2通

消印を確認しながら封筒を1枚ずつ並べる少年の手
消印を確認しながら封筒を1枚ずつ並べる少年の手

「1978年に入ってから、厚みの違う手紙が2通届いたのよ」とアンは続けました。「何かが入っているように感じた。でも、やっぱり開けられなかった」。イーサンは手紙の束を確認しました。28通目と29通目、ともに1978年の消印です。差出地はアリゾナ州フェニックス。その2通の中に、いったい何が入っているのでしょうか。

17. 28通目の告白

深夜に便箋にびっしりと文字を書き込む中年男性(回想)
深夜に便箋にびっしりと文字を書き込む中年男性(回想)

イーサンはアンに確認してから、28通目の封を切りました。中に便箋が4枚、びっしりと書き込まれていました。「アン、俺はやっと自分が壊れていた理由がわかった。医者に会って、初めて話を聞いてもらった。ベトナムで見たことが原因だと言われた。だから去った。きみを守りたかったんだ。もっと早く治療を受けていれば、あの朝、逃げなかったのに」。

18. 「守るため?」

涙をこらえながら窓の外を見る老女
涙をこらえながら窓の外を見る老女

アンが手で口を覆いました。「守るため、と書いてあるの?」と彼女は繰り返しました。声が震えていました。「ずっと、自分が嫌われたのだと思っていた。私のどこかが足りなかったのだと思っていた」。イーサンは29通目の封筒を手に取りました。28通目より明らかに厚みがあります。この手紙の中には、何が入っているのでしょうか。

19. サイゴンで買った指輪

木製の小箱に収められた細い金の指輪の写真
木製の小箱に収められた細い金の指輪の写真

29通目を開けると、折りたたまれた便箋とともに一枚の写真が入っていました。木製の箱の上に細い金の指輪が置かれた写真です。「アン、ずっと持っていた。サイゴンの市場で買った。お前に渡すその日まで、肌身離さず持ち続けるつもりだ。俺はまだ、きみと結婚したいと思っている。それだけは10年間、一度も変わらなかった」。

20. 10月15日

最後の手紙を静かに読み上げる少年と聞き入る老女
最後の手紙を静かに読み上げる少年と聞き入る老女

最後の30通目の封を切りました。1978年10月10日の消印です。「アン、10月15日にミズーラへ戻る。空港から直接きみの家に行く。待っていてほしい。今度こそ全部話す。ちゃんとした男として、きみの前に立てる気がする」。便箋はたった一枚、短い文章でした。読み終えたとき、イーサンはアンの顔を見ました。10月15日——その日に、何が起きたのでしょうか。

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