11. 気をつけろ

バーミングハムのターミナルで、初老の男は目を覚ましました。席を立ちかけた男はふと足を止め、マイルズを見下ろしました。「その住所、気をつけろ」。マイルズは「何を知っているんですか」と問い返しましたが、男はすでに通路を歩き出していました。降り口で一度だけ振り返り、帽子のつばを引いた男の姿は、人混みにすぐ溶け込んで消えていきました。あの男は、コールド・スプリング・ロードの何を知っているのでしょうか。
12. 消えた女

ミシシッピ州で乗り換えたバスの隣の席に、黒いジャンパーを着た二十代の女性が座りました。名前はキャシーといい、ダラスで仕事を探しているとのことでした。マイルズがうとうとしたとき「寝ていいよ」とだけ言いました。目が覚めると、キャシーの姿が消えていました。代わりに座席には折り畳まれた紙が置かれており、広げると手描きの地図が入っていました。走行中のバスから、彼女はどこへ消えたのでしょうか。
13. 行くな

地図にはダラス郊外のいくつかの道が描かれており、コールド・スプリング・ロードも含まれていました。しかし地図の端には赤いペンで大きくバツ印がつけられた場所があり、そこには「行くな」と書かれていました。住所の番地とほぼ同じ場所でした。バーミングハムの老人も「気をつけろ」と言っていました。二人は別々に、同じ場所について警告しています。この二人は、どこかでつながっているのでしょうか。
14. テキサスの夜明け

バスがテキサス州に入ったのは、翌朝の夜明けころでした。地平線から朝日が昇り、広大な平野を橙色に染めていきました。マイルズはその光景を見て、初めてこの旅が本物だと感じました。ダラスのターミナルに降り立つと、乾いた風が頬を刺しました。財布にはもう31ドルしか残っていませんでした。警告を二度受けたその住所へ、それでも足を向けるのは正しいことなのでしょうか。
15. 白いフェンスの家

コールド・スプリング・ロードは、古い木々が並ぶ静かな通りでした。72番地は白いフェンスで囲まれた古びた一軒家で、庭には手入れされた花壇があり、玄関先には古いロッキングチェアが置いてありました。マイルズは門の前で立ち止まりました。チャイムを押せば、すべてが変わります。そのとき玄関の扉が内側から開き、六十代の女性が現れました。女性はマイルズを見て「来ると思っていたよ」と言いました。
16. 祖母の告白

女性の名前はドロシーといいました。「中に入りなさい」と促されるままに、マイルズは玄関を入りました。居間の壁に家族写真が飾られており、そのひとつに写真の男がいました。若い頃の姿でしたが、間違いありませんでした。「この人は?」と聞くと、ドロシーはしばらく黙り「私の息子よ」と答えました。そして「あなたのお父さん」と続けました。ドロシーは、なぜ最初からマイルズが来ることを知っていたのでしょうか。
17. 20年前の約束

ドロシーはキッチンでコーヒーを淹れながら話し始めました。息子の名前はジェイクといい、二十年前にアトランタで働いていたときエレナと出会いました。しかし当時のジェイクにはギャンブルの借金問題があり、返済できずに追われる形でテキサスへ逃げ帰ってきました。「必ず戻る」とエレナに約束しましたが、戻れませんでした。「ジェイクはずっと後悔していたわ」とドロシーは言いました。「あなたのことも、知っていた」と付け加えました。
18. 封の切られていない封筒

「父は今、どこにいるのですか?」とマイルズが聞くと、ドロシーの表情が曇りました。「三年前に出て行ったのよ。また問題が起きて——今度は違う種類のね。私にも連絡先を教えてくれなかった」。マイルズはがっくりとしましたが、ドロシーはすぐに続けました。「あなたが来ることはわかっていた。だから準備していたのよ」。棚から取り出した封の切られていない封筒には「息子へ」と書かれていました。今度は違う種類の問題とは、何だったのでしょうか。
19. 父からの手紙

封筒の表の筆跡は、あのメモと同じものでした。マイルズの手が震えました。中には便箋が三枚入っており、最初の一行を見た瞬間、目が霞んでしまいました。「マイルズへ。これを読んでいるということは、お前がここまで来たということだ。よくやった」。父は生きていて、この手紙がマイルズに届くようドロシーに頼んでいたのです。マイルズは震えを抑えながら、次のページへ目を走らせました。
20. 証人保護

手紙によれば、ジェイクは三年前から連邦捜査局の情報提供者として活動していました。かつて関わってしまった違法賭博の組織の内部情報を当局に提供し、証人保護プログラムに組み込まれていたのです。マイルズに会いに行けば組織に居場所が割れる可能性があったため、動けなかったと書いてありました。しかし次のページには住所と電話番号が書かれていました。あえて連絡先を残したということは、もう会っても安全だということなのでしょうか。