母が死んで3日後、16歳の少年はひとりバスに乗った——タンスの底に隠されていた封筒の中身

21. 発信ボタン

スマートフォンの画面に電話番号を打ち込み発信ボタンを押す少年の手元
スマートフォンの画面に電話番号を打ち込み発信ボタンを押す少年の手元

手紙の最後のページには、ニューメキシコ州アルバカーキの住所と電話番号が書かれていました。「かけるかどうかはお前が決めろ。会いに来てもいい。ただ、一人で来い」とありました。ドロシーはコーヒーカップを持ったまま、マイルズから視線を外しました。マイルズは番号を打ち込み、発信ボタンを押しました。呼び出し音が三回鳴り、四回目に入る前に男の声がしました。「もしもし」——その一言で、マイルズの喉が完全に閉じてしまいました。

22. 初めての声

電話口で静かに涙を流す少年の横顔と、そっとティッシュを差し出す老婦人の手
電話口で静かに涙を流す少年の横顔と、そっとティッシュを差し出す老婦人の手

「マイルズか?」と男は言いました。答えられませんでした。喉が詰まって声が出なかったのです。それでも男は「よかった、元気そうで」と続けました。電話越しなのに、その声はなぜか懐かしく感じられました。「会いに来られるか」と男は聞き、マイルズはやっと「はい」とだけ絞り出しました。電話を切ると、ドロシーがティッシュを差し出してきました。自分が泣いているのに気がつきましたが、なぜこんなにも涙が出てくるのでしょうか。

23. 西へ

木々が並ぶ静かな通りを歩く少年の前に止まる一台の車
木々が並ぶ静かな通りを歩く少年の前に止まる一台の車

ドロシーはサンドウィッチを作り、二十ドルを渡してくれました。「バス代の足しにして」と言いながら送り出してくれました。コールド・スプリング・ロードの木々の間を歩きながら、マイルズはあの手描きの地図を思い出しました。老人は「気をつけろ」と言い、キャシーは「行くな」と書き残しました。それでもマイルズは来て、そして今、もう一歩先へ向かおうとしていました。バスターミナルへ向かう途中、一台の車が横に止まりました。窓が開くと、あのグレーのジャケットの男が座っていました。

24. 古い友人

広大なテキサスの荒野を西へ向かって走る車の中で前を見つめる二人
広大なテキサスの荒野を西へ向かって走る車の中で前を見つめる二人

「乗れ」と男は言いました。「アルバカーキまで送る」と続けました。どうして行き先を知っているのか——マイルズが問う前に、男は「俺もジェイクの仕事に関わっている」と言いました。連邦捜査局の人間かと聞くと「そんなかっこいいもんじゃない。ただの古い友人だ」と答えました。バスを降りて人混みに消えたはずの男が、アルバカーキへ向かうマイルズの前に現れています。この男はずっと、マイルズの後をついてきていたのでしょうか。

25. 夕暮れのアルバカーキ

オレンジと紫に染まるアルバカーキの夕暮れ空の下に立つ一軒家の前の少年
オレンジと紫に染まるアルバカーキの夕暮れ空の下に立つ一軒家の前の少年

アルバカーキに着いたのは夕暮れ時でした。街はオレンジと紫の空に包まれていました。男は住宅街の前で車を止め「ここから先は一人で行け」と言いました。マイルズが礼を言って降りると、男は「バーミングハムで言ったこと——あれは住所への警告じゃなかった。旅そのものへの警告だった。それでもお前は来た。それで十分だ」と言い、アクセルを踏みました。マイルズは小さな一軒家の前に立ち、ドアをノックしました。

26. 初めての対面

玄関で初めて向き合う父と息子、互いに似た目元で立ち尽くす感動の瞬間
玄関で初めて向き合う父と息子、互いに似た目元で立ち尽くす感動の瞬間

扉が開きました。五十代の男で、白髪交じりの黒髪を短く刈っていました。目元がマイルズに似ていました——いや、マイルズが男に似ているのです。二人はしばらく無言で向き合いました。男がまず口を開きました。「大きくなったな」。一度も会ったことがないのに「大きくなった」と言えるということは、ジェイクはずっとマイルズのことを見ていたのでしょうか。

27. 愛していましたか

夜の食卓を挟んで向き合い真剣な眼差しで問いかける少年と目を伏せる父
夜の食卓を挟んで向き合い真剣な眼差しで問いかける少年と目を伏せる父

食事をしながら、ジェイクは話しました。エレナと別れた後も遠くから見守っていたこと、病気になったことも知っていたこと、そして会いに行けなかった本当の理由を話してくれました。「正直に言えば——怖かった」とジェイクは目を伏せました。「お前に拒絶されることが」。マイルズは箸を置き、父の顔を真正面から見ました。怒りがないわけではありませんでしたが、今はそれより先に確かめたいことがありました。「母のことを、愛していましたか」。ジェイクの目が、赤くなりました。

28. 溶けていくもの

夜の室内で静かに向き合う父と息子、それぞれの目に涙が光るシーン
夜の室内で静かに向き合う父と息子、それぞれの目に涙が光るシーン

「愛していた」とジェイクは言いました。「今も」。沈黙が続きました。マイルズはゆっくりと息を吐きました。失われた時間は戻りません。母の最後に父がいなかった事実も変わりません。それでもマイルズの中で、何かが溶けていきました。怒りでも悲しみでもなく、ずっと胸にあった空白のようなものが消えていく感覚でした。「会いに来てよかった」とマイルズは言いましたが、ジェイクの目には何が浮かんでいたのでしょうか。

29. 毎週日曜日

窓からアルバカーキの夜景を眺める少年の穏やかな横顔
窓からアルバカーキの夜景を眺める少年の穏やかな横顔

その夜、マイルズはジェイクの家に泊まりました。部屋は小さかったですが清潔で、窓からアルバカーキの夜景が見えました。スマートフォンには施設の担当者から三十件以上の着信がありましたが、もう怖くはありませんでした。マイルズはジェイクに言いました。「18歳になったら、また来てもいいですか」。ジェイクはすぐに「当たり前だ」と答えました。「それまでは電話しろ。毎週日曜日、必ず出る」。マイルズは初めて、父親という存在をそこに感じました。

30. 帰りのバス

東へ向かうバスの窓に流れる景色を背に父の写真を見つめる少年の穏やかな横顔
東へ向かうバスの窓に流れる景色を背に父の写真を見つめる少年の穏やかな横顔

帰りのバスの中で、マイルズは写真の男——父のジェイク——を改めて見ました。草原を背景に笑うその顔が、今は違って見えました。遠い人ではなく、確かにそこにいる誰かの顔に見えました。母が最後まで封筒を隠していた理由が、今はわかる気がしました。守るためだったのです。バスはテキサスを抜け、東へ向かっていました。マイルズはヘッドフォンをして目を閉じました。初めて、眠れる気がしました。

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