時計の裏側――40年を共にしたオウムが最後に伝えたロバートのメッセージ

1. オウムの言葉

ルイジアナ州ニューオーリンズに暮らすマーガレット・ウィルソン(70歳)は、夕食後にリビングで編み物をしていました。夫のロバートが心臓発作で突然亡くなって3ヶ月が経っていました。静かな部屋の隅から、声が聞こえました。「うしろをみて」。アフリカン・グレーのオウム、アインシュタインが言ったのです。マーガレットは驚いて顔を上げました。ロバートが亡くなって以来ほとんど声を出さなかったアインシュタインが、40年間毎日聞いてきた夫の声そっくりに囁いたのです。

2. 亡夫の声に似た響き

翌朝も、アインシュタインは「うしろをみて」「とけいのうしろ」と繰り返しました。マーガレットはオウムにエサを運びながら、その目をじっと見つめました。アフリカン・グレーは単に言葉を繰り返すだけでなく、文脈を理解して話すことがあると、ロバートは生前よく語っていました。しかしロバートが逝った今、このオウムはなぜこの言葉だけを選んで繰り返し続けるのでしょうか?

3. 3ヶ月ぶりの声

2日後の夜、アインシュタインがこれまでと違う言葉を口にしました。「マーガレット、ちゃんとみつけてね」。その声のトーンは完全にロバートのものでした。40年間毎日聞いてきた、低くて穏やかなあの声でした。マーガレットはケージの前で立ちすくみ、手のひらが震えました。「ロバートはこのオウムに、何かを伝えていたのでしょうか?」と娘のクレアに電話しながら、マーガレットの目に涙があふれました。

4. ロバートとの出会い

マーガレットとロバートが結婚したのは40年前のことでした。ロバートは地元の建築会社でエンジニアとして働き、マーガレットは小学校で教師をしていました。二人が住み始めたニューオーリンズのあの家には、ロバートの祖父から引き継いだ大きな柱時計が置かれていました。家の中で一番古いものでした。二人の暮らしはいつも、その時計のゆっくりとした刻みとともにありました。

5. アインシュタインの来歴

アインシュタインがウィルソン家に来たのは25年前でした。ロバートが知人から譲り受けた生後3年のアフリカン・グレーでした。頭がよく、すぐに家族の名前を覚え、ロバートの口調を完璧に真似するようになりました。マーガレットは最初、オウムが苦手でしたが、やがてアインシュタインの賢さに惹かれていきました。いつの間にかアインシュタインはウィルソン家の3人目の家族になっていました。

6. 二人の日課

ロバートの日課は毎朝、アインシュタインのケージを開けて肩に乗せ、コーヒーを飲みながら新聞を読むことでした。二人はまるで会話をするかのように声を交わし、アインシュタインはロバートの言葉に独自のアレンジを加えて返事をしました。その様子を見るたびにマーガレットは笑いました。ロバートは毎日欠かさずアインシュタインと話していたのに、そのすべての言葉をオウムは今も覚えているのでしょうか?

7. ロバートとの特別な絆

ロバートが入院した時、アインシュタインは3日間エサをほとんど食べませんでした。ロバートが退院して帰ってくると、アインシュタインは大声で名前を呼び、部屋中を飛び回りました。「まるで家族が帰ってきたみたいね」とマーガレットが言うと、ロバートはアインシュタインを胸に抱きしめながら言いました。「こいつはちゃんとわかってる。どこにいても、戻る場所を覚えてるんだ」と。

8. 最後の会話

ロバートが亡くなる4日前、マーガレットはロバートが書斎でアインシュタインに向かって何かを長々と話しかけているのを聞きました。「覚えてるか……ちゃんと伝えるんだぞ……時計のうしろ……マーガレットに教えてやれ」という声が聞こえた気がしました。しかしその夜はそのまま眠ってしまい、翌朝確認する前にロバートは倒れたのです。あのとき聞こえた言葉は、本当にそういう意味だったのでしょうか?

9. 別れの日

ロバートが心臓発作で倒れたのは、平凡な火曜日の朝でした。救急車が来たとき、アインシュタインはケージの中で激しく羽を動かし、止まらない声で何かを叫び続けました。その後、ロバートは病院で息を引き取りました。マーガレットが帰宅すると、アインシュタインは止まり木の上で静かに丸まり、それ以来ほとんど声を出さなくなりました。二人と一羽で分かち合っていた時間は、あまりにも突然に終わりました。

10. 深まる悲しみ

3ヶ月が経ちました。マーガレットは毎日同じ時間に起きて、同じように食事を作り、ロバートのいない椅子を見ながら食べました。アインシュタインにエサを運ぶとき、その目がロバートを探しているような気がして胸が痛みました。もしアインシュタインを売ったら、この悲しみから少し離れられるでしょうか。それともアインシュタインは、ロバートが残してくれた最後の繋がりなのでしょうか?

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