21. ロバートの手紙

中には3つのものが入っていました。白い封筒、赤いビロードのポーチ、そして折り畳まれた1枚の紙でした。封筒には「マーガレットへ」とロバートの手書きで書かれていました。マーガレットはその場に座り込みながら封筒を開けました。「僕が先に逝ってしまうかもしれないと思って、これを書いている」という書き出しで始まる手紙でした。日付を見ると、ロバートが亡くなる半年前のものでした。
22. 手紙の内容

ロバートの手紙には、こう書かれていました。「6ヶ月前、医者から余命1年と言われた。あなたには心配をかけたくなくて、言えなかった。でも何かを残したかった。40年分の感謝と、あなたへの愛を」。マーガレットは読み進む手が震えて止まりませんでした。ロバートは半年間、一人で病気のことを抱えながら毎日笑い続けていたのでしょうか?そしてなぜ、最後まで言ってくれなかったのでしょうか?
23. 病気を知っていた

クレアが声をあげて泣きました。マーガレットは涙をこらえながら続きを読みました。「心臓が思ったより悪かった。手術のリスクも高かった。でも最後の1年を、あなたといつもと変わらずに過ごしたかった。だから黙っていた。怒らないでほしい」。マーガレットは手紙を胸に押し当てました。怒れませんでした。ただ、もう一度だけロバートに会いたいと思いました。
24. 旅行の計画書

折り畳まれた紙を開けると、旅行の計画書でした。「40周年記念旅行:ヨーロッパ10日間 マーガレットが昔から行きたがっていたアルザス地方とパリ」と書かれ、行きたい場所や食べたいものが細かくリストアップされていました。ロバートは旅行嫌いで、海外に行ったことは一度もなかったのです。それでも、マーガレットのために計画を立ててくれていたのでしょうか?
25. ロケットの中身

赤いビロードのポーチを開けると、小さな銀のロケットが入っていました。表に「M&R 40」と刻まれていました。金具を開けると、二人の若い頃の写真が入っていました。結婚式の翌日、ニューオーリンズの橋の上で撮った一枚でした。マーガレットが40年間探し続けていた、唯一失くしたと思っていたあの写真でした。ロバートはずっと持っていたのです。
26. 最後の贈り物

手紙の最後にはこう書かれていました。「もし僕が逝ってしまったら、アインシュタインに聞いて。あいつに教えておいたから。一緒に旅行に行ってほしい。クレアを連れて。僕が行けなかった分まで楽しんで。それが僕の最後のお願いです。ありがとう、40年間」。マーガレットは手紙を読み終えて顔を上げました。このオウムは40年間ロバートと同じ時間を生きてきたのでしょうか?それとも今も、ロバートの声を胸の中に持ち続けているのでしょうか?
27. アインシュタインの役割

マーガレットとクレアは長い間、柱時計の前に座っていました。アインシュタインがケージの中から静かに言いました。「ロバート、みつかった?」。その一言でまた二人の目に涙があふれました。ロバートはアインシュタインに「マーガレットが見つけるまで教えてあげろ」と頼んでいたのです。25年間共に生きたオウムは、主人との約束を律義に守り続けていたのです。
28. クレアとの電話

翌日、マーガレットとクレアは旅行代理店に電話しました。ロバートの計画書にはアルザスとパリが書いてありました。代理店の担当者が「どんな旅にしたいですか」と聞きました。マーガレットは答えました。「夫が計画してくれた旅です。夫の代わりに、娘と一緒に行きます」と。電話を切ってから、マーガレットはアインシュタインのケージに近づいて、そっと「ありがとう」と囁きました。
29. 旅への出発

出発の朝、マーガレットはアインシュタインを近所の獣医に預けました。担当の先生は「このオウムは随分賢いですね」と言いました。マーガレットは微笑みました。「夫の言葉を伝えてくれたんです」と話すと、先生は静かに頷きました。空港へ向かう車の中で、マーガレットは窓の外を流れるニューオーリンズの街並みを眺めました。ロバートが一緒にいたなら、この景色をどんな気持ちで見たのでしょうか?
30. 時計の前で

10日後、マーガレットとクレアはパリから帰ってきました。荷物を解いてリビングに座ると、アインシュタインがケージから呼んでいました。「おかえり」と、ロバートそっくりの声で。マーガレットは泣き笑いをしながら、アインシュタインをケージから出してやりました。オウムは肩に乗り、耳元でそっと囁きました。「ロバート、よかったって言ってる」。柱時計が午後3時を告げました。その音が40年間変わらぬリズムで部屋に響きました。ロバートはもういない。けれどもその声はここにある。愛は、こんなふうにして残るのかもしれません。※この物語はフィクションです。登場人物や出来事はすべて架空のものであり、実在の人物や出来事とは一切関係ありません。写真はイメージです。